-宮古島の変貌を憂える-

 宮古島4月19日(日)に行われた宮古島トライアスロンに出場してきました。毎年参加しており、もう6回目になります。種目は水泳3悅、自転車155悅、マラソン42.195悅。これらすべてを14時間以内にこなしてしまおうというものです。日本全国はもとより海外約20カ国からも参加があり、今回の参加人数は約1400人になりました。道路も海もみんな最短距離を進もうとするので、もうパニック状態なんです。6年前は800人でしたから、ずいぶん増えたものです。

1.“本土化”はこの島にとって良いことなのか

 走りながら目に入るのは、何といっても南国特有の珊瑚礁とコバルトブルーの海。また、野に目をやると、野生のユリがあちこちに見られました。
 しかし、毎年参加して感じることですが、年々この島でも自然破壊が進んでいるということです。
 その一つが護岸工事や架橋による自然破壊です。人口190人の島に19億円もかけて橋を架けているんです。また、橋の建設で潮の流れが変わり、周辺は珊瑚の死骸で真っ白になってしまった場所もありました。6年前は珊瑚がいっぱいだったのに…。それに魚や亀もいなくなってしまいました。リゾートを売りにした開発も考えものです。

 もう一つ気になるのが、タバコの栽培が増えているということです。この島は、それまでサトウキビしか作れない土地柄でした。ところが、タバコも作れるということが分かり、4~5年前からだんだん移行しつつあるんです。10a当たりの儲けはサトウキビが10万円、タバコが100万円。これなら、誰でもタバコを作りたくなるというものです。
 しかし、タバコの作付けが増える一方で、大きな問題も発生しているんです。その問題とは、タバコはサトウキビに比べて、大量の農薬を使用するということなんです。実際に農薬の影響も出ているようで、以前はチョウチョが乱舞していたのに、今では姿が見られなくなって場所も出ています。人間も肝臓病が増えたと聞きます。一方、農家では、いくら日当を高くしてもアルバイトが集まらないと嘆いています。地元の人は農薬の害のことをよく知っているので「命には変えられない」と思っているんです。
 この島は「夜に酒を飲むことだけが楽しみ」というような場所だったんです。“禁断”の味を知ってしまったこの楽園もどんどん変わってしまうんでしょうか。

ハイビスカス

2.この“やさしさ”はどこからくるのか

 トライアスロン当日は、それまでぐずついていた天気が嘘のようないい天気でした。島をあげてのお祭り騒ぎで、バスやタクシーの運転手を除いては島民みんなが総出で、応援やボランティアをやっておられました。
 獅子舞いで場を盛り上げたり、ドリンクを渡すために一緒に走ってくれたりと、心の底から応援してくれているのが分かりました。そして、何よりもうれしかったのは、完走後、ボランティアの女子高生がマッサージしてくれたことです。嫌がる顔ひとつせず、興味深げに話しかけてくるんです。これには思わず涙ぐんでしまいました。本土ではこうはいかないでしょう。
 今までも、この島の人のやさしさは十分感じていました。このやさしさがどこからくるものなのか、ずっと疑問に感じていたんですが、今年行ってみてやっとその答えが分かりました。
 この島の人々は、良い意味で「神」という存在を信じていることなんです。 そのことを実感するこんなエピソードがありました。今回、トライアスロンで訪れたのを機会にタクシーを借り切って、島をあちこち回ってみました。宮古島には遺跡や古墳など多くの遺産が眠っているんです。その一つを訪れた時、記念に石を拾おうとしたんです。すると、一緒に回ってくれていたタクシーの運転手さんが、表情を一変させ「その石を持って帰ってはいけない。あなたの身に危険なことが起こりますよ」と言うんです。
 この島の人は道路の計画があっても、そこに祠があれば迷わず、計画を変更するそうです。実際に建設を行おうとしても、建機が動かなかったり、運転席にヘビの大群がいたという話もあるそうです。この島の人は、神という存在を本当に恐れているんです。
 近ごろでは、「神も仏もない」とか「人間が一番」という言葉が多く聞かれ、「人間が自然を支配している」という意識が蔓延しています。人間は自然の中の一員という意識がないから、ダイオキシンやゴミの問題、オゾン層の破壊が起こるんです。どこかで「自然を畏敬し、神を恐れる」という気持ちを持っていないと、この地球とは共存できないと思います。


ゴールの瞬間!ゴールの瞬間!
向かって右が私。左は家内ではなく、地元で応援してくださった方です。

このように、皆さん、自分のことのように喜んでくれます。

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太陽くんの環境ノート
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